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News ニュース 13 JULY 2023 &＃49187; Tags 校友, 文学・芸術, ニュース, 演劇のはなし 初心者のあなたに伝えたい　NHK職員・桑野智宏が語る演劇の魅力 「早稲田小劇場どらま館」×「早稲田ウィークリー」による「演劇のはなし」のコーナーでは、「演劇入門」「誰にでも伝わることばで」をキーワードに、さまざまな分野で活躍する、演劇にゆかりのある早大出身の著名人にインタビュー。演劇の魅力をお話しいただきます。今回のゲストは、NHK職員として数々のドラマの演出・プロデュースを担う桑野智宏さん（政治経済学部卒）です。 桑野智宏（くわの・ともひろ）福岡県出身。2004年、早稲田大学政治経済学部卒業。在学中はてあとろ50&＃8242;（公認サークル）に所属。2005年、3度目の正直でNHKに入局し、助監督としてキャリアをスタート。これまでに携わった作品は、朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』（演出）や大河ドラマ『いだてん』（演出）、NHKスペシャル『未解決事件 File.09 松本清張と「小説帝銀事件」』（プロデュース）など多数。8月10日に放送予定の特集ドラマ『軍港の子 ～よこすかクリーニング1946～』では制作統括を務める スポーツ少年の人生を変えた、つかこうへい作品との出合い 現在、NHK職員として多様な作品に携わる桑野さん。早稲田大学を進学先に選んだのは、同じく早大出身だった父の影響と、母に連れられて観た演劇が理由だった。 父は箱根駅伝とかをテレビでやっていると校歌『都の西北』を歌うような人で。幼い頃からの刷り込みというか、父の作戦が成功したというか（笑）、僕も物心ついた頃には「早稲田っていいな」と思っていました。一方で高校から演劇をやっていたので、大学でも芝居をするなら早稲田だろう、みたいな思い込みもあって。 演劇を始めたきっかけこそが、初めて母親と観た舞台だったという桑野さん。そのたった一本の作品のどこに衝撃を受けたのだろうか。 高校入学の直前くらいに、つかこうへいさんが地元の福岡で『蒲田行進曲～銀ちゃんが逝く～』（1994年）という舞台を上演すると母が聞きつけて、連れて行かれたんです。それまで僕はバスケットボール一筋だったんですけど、その舞台を見て「こんな世界があるんだ！」と雷に打たれたような衝撃を受けて、高校では演劇部に入ることにしました。 どこに衝撃を受けたかはうまく言葉にできないのですが、幕が開く前に山崎銀之丞さんが前説みたいな感じで舞台への意気込みを語ったんです。それを見た瞬間になぜか泣いていて、自分でも「あれ？」と。つかさんの舞台って冷静じゃいられなくなるというか、役者が見せる人間の狂気みたいなものが異常な空間を作り出して、非日常の世界に連れ込まれるような感覚があって&＃8230;。それが15歳の少年にはとても新鮮だったんだと思います。 「母は、演劇にハマり留年した僕を見て、あのとき連れて行って失敗した、と言っていました。その後、NHKから内定をもらったと電話したときには、安心したのか電話の向こうで泣いていたと思います（笑）」 早稲田大学に入学した桑野さんは「てあとろ50’」に入会。同じく在籍していた一学年上の先輩で、後に映画監督となる森義隆さん（校友）から大きな影響を受ける。 入学当初いろいろな演劇サークルの公演を見ました。そんなときに森さんが作・演出を手掛けた、てあとろ50’の新入生歓迎公演を見たんです。面白くて笑えて最後にはグッとくるエンタメ作品で、自分と価値観が合うなと思い、入会を決めました。客席も沸いていたし、演者自身も自分たちだけの満足じゃなくて、観客の反応を感じて満足しているように見えたんですよね。 しかし、次の公演を終えると、森さんはいきなり演劇を辞めてしまう。 新人として入会すると、てあとろ50’には2年生の森さんと僕ら1年生しかいなかったんですが、冬にどらま館でやった公演は大成功したんです。でも、そこで森さんは「演劇をやり切った」と思ったのか、突然てあとろ50’を辞めて、1年生だけになってしまって。それで、それまで演出助手をしていた僕が脚本と演出をやることになったんです。でも実際に演出をやってみると、観客の反応が良いときも悪いときもあって。その反応を感じて作品の精度を上げていくのが面白く、明確なゴールがない演出という仕事に夢中になっていきました。 一方で、その後自主映画の世界に進んだ森さんの影響で、映像にも面白さを感じるようになったんです。芝居の場面転換で使う映像を作り始めたりと、演劇に取り入れるようになりました。 写真左：てあとろ50’メンバーとの集合写真（前列中央が桑野さん） 写真右：桑野さんが作・演出を担当した作品『Marginal Man』（2000年5月19日～22日、早稲田どらま館にて） たくさんの感覚を使って体験する演劇だからこそ、観劇の記憶は深く残る 映像でフィクションを撮ることに興味を持った桑野さんはNHKに入局。ドラマのディレクターとしてキャリアを重ね、朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』（2021年）では企画の立ち上げから関わることに。 東日本大震災から10年という2021年に放送するにあたり、被災地の宮城県を舞台にしたいなと。でも、どの町を舞台にしてどんなドラマを描けば良いのか&＃8230;現地を何度取材しても、なかなか答えは見つかりませんでした。脚本の安達奈緒子さん（校友）を含め、プロデューサーも演出陣の中にも被災した人間はいなかったんです。被災者ではない自分たちが震災を描いていいのか？ そして、日本の多くの人も被災していない…。被災の有無にかかわらず、視聴者に届くドラマとは何か？ そう悩む中で、安達さんから「津波を見ていないヒロイン」という設定をいただいたことで一気に『おかえりモネ』の形が出来上がりました。家族や幼い頃からの友人たちがいて、宮城県で素晴らしい時間を過ごしていたけれど、たまたま自分だけが津波を見なかった…直接的には自分だけが被災せず、島に取り残された友人たちの本当の恐怖や苦労は分からない…そういう葛藤、罪悪感を抱えたヒロインなら、多くの視聴者も感情移入できるんじゃないかと。 『おかえりモネ』の主人公・永浦百音（清原果耶）は、宮城・気仙沼湾沖の島に生まれ育ち、登米市で青春を過ごす。天気予報を通じて人々の役に立ちたいと気象予報士を目指して上京し、やがて故郷へ戻り気象予報士としての能力を生かして地域に貢献する ドラマの演出において演劇での経験が生きることはあるのだろうか。桑野さんは「見ている人に想像してもらう」ことを心掛けていると語る。 演劇ではセットを一から十まで作り込むわけではないし、そこにないものを観客自身にどれだけ補ってもらえるかが大事だと思っています。逆に、ドラマは映像で場面を切り取るじゃないですか。つまり、周りの映っていない部分を捨てているということ。この捨てた部分を、どれだけ想像してもらえるかを常に考えています。画面では見えない演者の背景や思いを、視聴者に想像してもらおうとする意識は、演劇をやってきたからかもしれないですね。 例えば、『おかえりモネ』の第8週で、浅野忠信さん、永瀬廉さん、坂井真紀さんが演じる及川家の親子が、2011年2月に新しくできた船を披露する進水式に臨む、幸せの絶頂のようなシーンがあって。台本では、その次のシーンで、清原果耶さん演じるヒロインの永浦家の人たちが被災した家を片付けていて、泥だらけになった進水式の時の写真を洗っている&＃8230;つまり、そのシーンとシーンの間に震災があったということ。それをどう表現したらいいのか、すごく悩みました。見ている人にその間の出来事をどう想像してもらえばいいんだろうって。「震災がありました」と説明するのは簡単ですけど、説明じゃなく想像してもらいたかったんです。思いを寄せてほしいというか。 結局、及川家3人が進水式で満面の笑顔になった瞬間でストップモーションして、その映像をブラックアウトさせた後に、満天の星空の映像を8秒ほど入れました。そこから、笑顔の場面が写った写真が泥だらけで見つかるシーンにつなげました。3月11日の夜、被災地は停電していて、夜空がすごくきれいだったと取材した方々は皆さんおっしゃっていました。放送後にSNSを見ると、星空の意味が多くの人に伝わったようだったので良かったです。 『おかえりモネ』のロケハン写真 写真左：主人公の永浦百音（清原果耶）と菅波光太朗（坂口健太郎）が勉強会を行っていた「カフェ椎の実」 写真右：宮城県気仙沼市の気嵐(けあらし)。初冬のよく晴れた日だけに見られる、海面から霧が立ち上がる現象で、冬の訪れともいわれる 演劇でも映像でも物語を作ってきた桑野さんが考える、演劇の面白さとは？ 映像も演劇も、物語を作ることは楽しいんですけど、演劇ってやっぱり「体験」だと思っていて。例えば、きれいな桜を撮って人に送ると、受け取った人もきれいだなと思うし、きれいなのは間違いない。でも、実際に見た桜は香りもあるし、風もあるし、写真で見たものとは別物ですよね。それと一緒で、演劇ってたくさんの感覚を使って体験する、すごく豊かな表現なんです。だからこそ、演劇の記憶って深く残るんじゃないかな、と。だから、まずはだまされたと思って一度観に行ってみませんか？ 一度の観劇で人生変わっちゃった人もここにいるくらいですから（笑）。 今年、新たなキャストで上演されたことでも話題に！ 桑野智宏さんがおすすめする演劇作品『笑の大学』 桑野さんが早大生におすすめする作品は、三谷幸喜原作・脚本の『笑の大学』。桑野さんは高校生のとき、初演の映像をテレビで見て衝撃を受けたそう。「演劇初心者の僕でも分かりやすくて笑ってしまったんですけど、笑っていた要素で最後にグッと胸を締め付けられる。とにかく三谷さんの脚本が素晴らしくて。また、演劇の魅力は想像力だと思うんですが、これは検閲官の部屋という一つの空間の中だけで完結する話で、部屋の外のことや登場人物の背景をずっと想像しながら見るので、とても演劇的な作品ですね」（桑野さん）。 時は戦時色濃厚な昭和15年。取調室にいる警視庁検閲係・向坂睦男と劇団『笑の大学』座付き作家・椿一。非常時に喜劇など断じて許さないとする向坂は、上演中止に追い込もうと執拗なまでの注文を繰り返す。しかしなんとか上演許可をもらいたい椿は、向坂が要求する無理難題を逆手に取りながら、あくまで真正面からの書き直しに挑戦する。警視庁の取調室を舞台に、相対する男2人のドラマが始まる（WOWOWオンラインより引用）。桑野さんが見た1996年公演のデジタルリマスター版ブルーレイはこちらから 【桑野さんが手掛ける次回作品の紹介】 桑野さんが初の制作統括を務める特集ドラマ『軍港の子 ～よこすかクリーニング1946～』が8月10日にNHK総合にて放送予定。「戦争の悲惨さを直接的に描くのではなく、戦後直後の『戦争孤児』をテーマにしたドラマです。孤児を演じてくれた子どもたちの表情から戦争の悲惨さを“想像”していただけるようなドラマになっていると思います。大人の役にも素晴らしい方々が出演されます。情報解禁を楽しみにお待ちください！」（桑野さん） 放送予定：8月10日（木）22:00～（73分） 脚本：大森 寿美男 音楽：渡邊 崇 出演：小林 優仁、髙橋 來、村山 輝星、原田 琥之佑、岡橋 亮汰、阿久津 慶人、阿部 紗英（語り）、三浦 誠己、岡部 たかし、仲野 太賀、松岡 茉優、田中 麗奈　ほか 制作統括：桑野 智宏 演出：田島 彰洋 公式Webサイト：https://www.nhk.jp/p/ts/NG9K1N8J2K/ 取材・文：末光 京子（1998年理工学部卒） 撮影：石垣 星児 画像デザイン： 内田 涼 &＃63485; Links &＃63341;初心者のあなたに伝えたい　俳優・安藤玉恵が語る演劇の魅力&＃63341;初心者のあなたに伝えたい　作家・角田光代が語る演劇の魅力&＃63341;初心者のあなたに伝えたい　俳優・筒井真理子が語る演劇の魅力 13 JULY 2023 &＃49187; Tags 校友, 文学・芸術, ニュース, 演劇のはなし SHARE Related Articles 関連記事 New 水墨画をきれいに描けるデジタル技術の研究【基幹理工学研究科】 &＃63282; Thu, 16 May 2024 &＃49187;研究活動, 学生の活躍, ニュース, 研究まっしぐら！ New “別品”の粋を目指そう！ &＃63282; Wed, 15 May 2024 &＃49187;ニュース, えび茶ゾーン New 不老不死を当たり前に！ 無料で医療を受けられる世界を作りたい &＃63282; Tue, 14 May 2024 &＃49187;在学生の方へ, ビジネス, 健康・医療, 技術, ニュース, ぴーぷる, 研究活動, 学生の活躍 New ～マレーシアから早稲田へ～知的な旅をより豊かに &＃63282; Fri, 10 May 2024 &＃49187;学生の活躍, アジア, 教育, グローバル, ニュース, スタディ・アブロード &＃63342; &＃63341; 早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新！活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。 Page Top &＃63344; 早稲田ウィークリー JapaneseEnglish www.waseda.jp/inst/weekly 特集教育・研究学生の活躍留学・キャリアコラム・お悩みバックナンバー サイトマップ 早稲田大学オフィシャルサイト（https://www.waseda.jp/inst/weekly/）は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。 推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。 このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。 このまま進む &＃63341; 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